[はじめに]
今回分かち合わないというテーマの中で広報として、私は「きらいなもの」をきいた。 「きらいなもの」が、最も本人のパーソナル性が出て、深ぼれるのではと思ったからである。きらいなものを聞き、そこからそれぞれの企画を立ち上げて、記事にすることで「アーティストの紹介」を試みる。 今回は第二回、松原元の紹介である。
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-目次-
1.《松茸探しはフィジカル》
2.《土瓶蒸しづくりはフィジカルだ》
3.《実食はフィジカルだ》
4.《まとめ》
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1.《松茸探しはフィジカルだ》
松原元さん(以降、元さん)の印象はというと、大阪の真面目なフランクお兄さんという感じである。きちんと天邪鬼で、ミーティングの時から結構、展示に対して「攻めの姿勢」で向き合っていて、「好敵手」ってスタンスだった。それがいいなと思っていた。私も基本的に逆張りの人間なので。
(ちなみにまだドラゴンボールはみていないらしい。あんなに好敵手の概念を勉強できる漫画はないが、それを素でいっている感じ)
なので今回嫌いなものを聞いた時も、色々出てきた。
きのこ類、うるさいじじい、赤信号、寒すぎる冷房、鼻パッドのないメガネ……。
一緒に検討を重ね、企画を立案していく上で、
「きのこ」
でいくことに。「きのこ嫌い」というのはそんなに珍しくもない。
最初はきのこを育てるとかいう話もあったのだが、それはきのこと同棲ということになるのでキツすぎるらしい。
「松茸なら食えるかも」ということに。
さてここで元さんの作風について少し言及しよう。
例えば、ひたすら椅子をを引きずって歩き続けたり
ひたすら石を蹴り続けたり
というフィジカルからスタートする作品が多い。そこには移動するというテーマや自身の原点である建築と行った考え方がありそうでもあるが、それらの作品は常にユニークさをはらむ。
というわけで
「きのこ嫌いが松茸を食べる」
という、圧倒的なフィジカル企画がスタートした。企画に乗っていただきありがとうございます。結果的には、ここで松茸を分かち合わない選択をとってもらってもぜんぜんいいが、ひとまず挑戦してくれた。「松茸を採取するところからしようか」という話もしていたのだが、流石に難しかった。松茸を永遠に探すだけってのも面白いのだが、間違って別のきのこを採取してしまう確率の問題、そもそも採取が難しいことが原因にあげられる。それに熊の被害の話も多かった時期だ。
間違って松茸に似た毒キノコを食べて、「嫌いなものを最後に食べて死ぬ」とかになったら、本当に最悪最低だ。
いや、この時代にそれで2人死ぬのは面白いけど。いや、さすがにダメすぎるだろ。すみません。
でも元さんならそのくらいの逆張りを、もしかすると受け入れそうな気概があるから、危ない。
(でも精神的には、元さんとずっと一緒に松茸を探していたいなとは思う。)
まあ、松茸は死と隣り合わせということで、高級食材であるということだ。
実は企画が動き出した時には、もうすでに松茸の季節が終わりかけだったこともあり、リサーチした結果、「名古屋の繁華街にあるデパ地下」という最も死から遠い場所に売っているということが判明。入手において一切の危険性も掠らないというのは、皮肉ということにしておこう。
申し分程度に、一緒に買いに行く。

「すぐにゲット。」
アメリカ産。4,000円くらいした。たけー。お金で解決。

これが松茸をゲットした松原元さん。安全そうである。
さて、この時は「味覚の秋」の季節で、隣のコーナーに「栗」も発見。元さんは栗が大好物、ということで、比較対象として栗も購入。これもパックで2000円くらいした。私からすればどっちも好きなので、普通に贅沢飯である。
こちらが栗をゲットした元さん。

安全なものを持っている感じがある。
松茸を最大限に食べる方法、それは……
「土瓶蒸し」である!
幸い、私の実家に土瓶蒸しセットがあったので、することが可能。
ということで、土瓶蒸しの材料も購入。
「三つ葉」「銀杏」「鳥もも肉」
(すだちはすでに松茸に内蔵済みであった)


実家からレシピを聞き出した森田。出汁は茅乃舎の出汁でいく。
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2.《土瓶蒸しづくりはフィジカルだ》
さて、ここからは調理編である。
(調理について撮影していた動画が消えてしまったので、割と言葉メインとわずかな写真で伝えていくことになります。すみません。頑張って伝えていく。)
私も土瓶蒸しを作るのは初めてだった。
元さんも普段あまり料理はしないようである。2人で共同作業する。
まずは銀杏。銀杏の炒り方がわからなくて、調べたら、「銀杏は爆発させて殻を剥く」という動画があったので、それをみてやる。
私の普段作っている森田新聞を折り込んで中に入れることに。3分と書いてあったけど、なかなか爆発しなくて、
探偵ナイトスクープの卵のやつを思い出す、と語り合う。
(そういえば元さんに教えてもらった探偵ナイトスクープの回はすごかった。力石の回である)。
なんとか爆発したので、その辺の木片で叩き割った。
さっきからなんかずっと物騒だな。
さすが死と近いフィジカル食材のメニューだ。さらにその後、銀杏の薄皮を永遠に剥いていく。
元さんとじゃなかったら割と心折れていたかもしれない。土瓶蒸しもフィジカル認定である。





次に、鶏肉、三つ葉を切っておく。
「料理楽しいっすね」と元さん。でも料理って普通に創作なので、やっぱ楽しい。

次に、松茸。
最初に香りをかいでもらうと、
「ああ、香りはいけるかもしれないっすわ」
とのこと!
松茸っていうのは香りなので、いやこれはいけるのでは?という兆しが見えてきた。
松茸は土がついたまま入っていた。けれど水で洗ってはいけないらしい。
ふきんで、土を丁寧に取っていく。
「これ、けっこうむずいっすね」
なかなか土はとれないので、かなり丁寧にやらないといけない。
アスキーアートで松茸拭き取りシーンを再現。お分かりだろうか。
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これがひたすら土をふきんで拭いたり、薄皮をむき続けて、なんとか土瓶蒸し前まで辿り着いた松茸と銀杏。

料理をし終えた頃には、もう1時間半くらい立っていた。
3.《実食はフィジカルだ》
「はい!というわけで、松原元さんの嫌いなもの、きのこ類のトップオブトップ、「松茸」を土瓶蒸しにして、実食していただこうかなと思います。逃避アイテムとして、元さんの大好物な「栗ご飯」を真横においてありますので、お口直しにご賞味ください。
果たしてお味は!?苦手を乗り越えられるのか!?」
元さん、まずは、土瓶蒸しのおちょこにだしを注ぎ、一口。
「……ああ…。
これはいけるかも。」
だしをのんだこの時点で、インタビューで「しいたけの出しが入っている時点で気づく」と言う状況を打破している気もする。これは本当にいけるかもしれない。
そして、ついに松茸をおちょこに入れて、箸でつまんで口に運ぶ。



元
「パクッ」
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「もぐもぐ」
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おい…………(棒)
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しい…………(棒)
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超絶妙なリアクション。
人間が初めて目撃した食材を食べてみたみたいな、ほぼ毒味のようなリアクションである。
その後、いや?どうなんだ??と元さんの中でわからなくなっていた。
美味しいのかどうかよくわからないらしい。いけるのかどうか揺れ動いている。
合間につまんだ鶏肉や銀杏、栗ご飯は「めっちゃうまい!」という反応。このリアクションがでるなら松茸は美味しいというわけではなさそうなのだが、鶏肉や銀杏に松茸の出汁は染み込んでいるはずなので、まずいというわけでもなさそうである。
もう一回いいですか?と何度か松茸を実食。
食べては、首を傾げて、わからながっている。。
結果:まあいける!!!
出汁単体だったら普通にいけるとのこと。身も、まあギリいけるらしい。しかしまあこの「土瓶蒸し」ならではの「所作の風情さ」が影響を与えた可能性も、大いにあるようだ。これはもう、美術。美術すぎる。幻を見せられたといえば、そういうことにもなるかもしれない。
後日、元さんから「松茸を食べた感想」を改めてお聞きしました。
松原元
「たった一言の「おいしい」さえ素直に伝えられない。
あの時、僕の舌は間違いなく松茸を受け入れていました。
嫌いなものを嫌いって言うよりも、好きな人やものを好きって胸を張って言う練習が必要みたいです。もう30も過ぎてるのに。」
「たった一言の「おいしい」さえ素直に伝えられない。
あの時、僕の舌は間違いなく松茸を受け入れていました。
嫌いなものを嫌いって言うよりも、好きな人やものを好きって胸を張って言う練習が必要みたいです。もう30も過ぎてるのに。」
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4.《まとめ》
元さんは、
私の「納豆とご飯は一緒に食べるべきではない理論」に唯一「やらないけど、ちょっとわかる」と理解を示してくれた人間であり、そういう絶妙な感覚に対しての鋭さがある気がする。つまりそういう点における共感性が高いとも言える「分かち合う」センスがあるなあと思う。
名古屋にきた時に一緒に味噌煮込みうどんを食べた時も「煮えてませんやん、おかしい」という反応ではありながらも、「またこれが食べたくなるんだろうな」と呟いたり。
元さんの作品はどれもフィジカルかつ、フィジカルだからこその繊細さを持ち合わせる。
今回の展示で出している「キャリ男」も、路上に落ちていたキャリーケースのタイヤを拾ってマスクを作り、それが大阪の観光やインバウンドについての言及に繋がっていく。
あくまでもユニークに。